川と人類の文明史

Rivers of Power (Laurence C Smith2023) 草思社
(*各章の概略は訳者より)
第一章 川と文明
*古代の川を中心に興る都市文明と水の制御が政治権力の基盤となる
P57 ジョージワシントン:オハイオ川の戦略的重要性を認識
第二章 国境の川
*政治的境界線としての河川利用、征服者による領有権主張、流域圏での水資源の共有確定
・1907  ハーモン・ドクトリンの否定 米・メキシコ間でリオグランデ川の水を公平に分け合う。
・敵同士が水問題で協定を結んだ例も多い
 1960 インダス水協定 インド・パキスタン
   1979~1994 アラブ・イスラエル間
 1804 ドイツ・フランス間(ライン川を永遠に共有することに同意)
 ⇒1815ウィーン会議でベルギー・スイス・オランダも加わる。
・メコン川の例
1995  メコン川委員会(MRC)成立: タイ、ベトナム。プノンペン、ラオス
⇒4ヵ国で協議して 水力発電ダムや灌漑用水路などの具体的開発プロジェクトを決定し優先順位をつける
2006 ラオスがメコン川でダム2基を建設する計画
2010  ラオスがダムの建設計画をMRCに提出 MRCは更なる調査を求め、メコン川の全てのダムを10年間凍結の提案
2012  ラオスがMRCの最終決定を待たずにサヤブリダムの建設を開始
2015 Lancang-Mekong Cooperation設立
⇒水資源の共有協定から協力的な運用・管理体制、地域経済の統合という壮大なビジョンに至るまで、河の果たす作用が「分断」よりも「統合」である場合がはるかに多い。
第三章 戦争の話
*戦争と川のかかわりについて、河川の戦略的利用、砲艦が戦争を決めた時代
第四章 破壊と復興
*洪水後の復興政策が政権を左右し、法制度を変え、洪水が戦争にも利用された
・1927年ミシシッピ川洪水 クーリッジ大統領、地元の要請(大統領が来れば義捐金が集まる)を聞かず、災害現場に行かなかったことで支持を失う(=共和党の北部地域での失墜)
⇒以後、各大統領は災害現場に赴くようになった。・1928,1936洪水防御法(Flood Control Act)
・蒋介石の堤防爆破 
P191: 1889年South fork damの決壊
⇒strict liability 厳格責任(被害者は懲罰的賠償を求めることができる)判例:1868年Rylands v Fletche(英、過失責任の明確化)
第5章 巨大プロジェクト
*川に関する古くからの技術である、ダム、流路変更、橋を軸に、現代の河川工学の巨大プロジェクトを見る
P202:GERD(大エチオピアルネサンスダム)
⇒1959年:ナイル川水協定 エジプトに55.5㎦/年 スーダンに18.5㎦/年
 1999年:ナイル川流域イニシアティブ(NBI)立上げ
 2011年:エチオピアが青ナイル川に巨大ダムの建設を発表
             エチオピア、ウガンダ、ケニア、タンザニア。ブルンジ、ルワンダがナイル流域の水の利用に調印
P214:大規模ダム
先駆け⇒フーバーダム、グランドクーリダム、フォートベックダム、TVAのダムシステム
1950,60年代⇒アンガラ川、エニセイ川(ブラーツクダム、クラスノヤルスクダム)、インダス川(タルベラダム)、サトレジ川(バクラダム)
現在⇒三峡ダム、ベロモンテダム(ブラジル)、グランド・インガダム(コンゴ川)
P222:運河 ジェームズ・ブリンドリー運河(英)、ドルトムント・エムス運河、キール運河(1895),エリー運河(1825)
P228 1960年「州水計画」北部の水を南部へ
P232 河川分水計画①南水北調_中線=漢江から北京へ②トランザクア(コンゴ川からチャド湖へ)
インド:③NRLP(全国河川連結プロジェクト)
・ヒマラヤ河川開発コンポーネント:ガンジス川とプラマプトラ川の源流を連結
・インド半島河川開発コンポーネント:数多くの大河を相互に連結
第六章:豚骨スープ
*水質汚染と、主にアメリカと中国の取組、温暖化による融氷水の増加とその世界的影響について
P250 米の環境保護 1980年 CERCLA(包括的環境対処・補償・責任法)からSuper Fund Program 誕生・RCRA(資源保全再生法)1976(フォード大統領)を修正して成立 1983年ラブ運河=最初のsuper fund site
・きっかけ 1969 オハイオ川の自然発火事件
⇒1970 ニクソン 環境保護主義の新たな10年 EPAの設立
⇒水質浄化法、大気浄化法、有害物質規制法、RCRA,CERCLAの施行
・中国 習近平2017環境保護を主張
第7章:新たな挑戦
*ダムの弊害、電力需要、生態系を破壊する侵入種、洪水、水不足といった問題に対処するための 新旧の技術の知見
2015 サンクレメンテダムの撤去
ダム被害の軽減①デザイナーフロー②土砂通過技術③流れ込み式ダム
P324 ロサンゼルス都市圏水道公社:カイトリンガー「地域再生水プログラム」⇒地下水補充システム(GWRS Groundwater replenishment system
第八章:川とビッグデータ
*河川の遠隔探査技術について、センサー、衛星、数理モデルを軸に。水循環の観点から、河川を「淡水の質量とエネルギーとを物理的に集める途方もない装置」
P356 データ
SWOT Surface water ocean topography 表層水観測衛星
GPM 全球降水観測
クラウドサット衛星
SMAP 土壌水分観測衛星
GRACE Gravity Recovery and climate Experiment) 重力観測衛星 地下水が枯渇している地域を検知
第9章:再発見される川
*川が人間の精神に及ぼす影響、都市部の沿岸地域再開発、河川の今後と全体のまとめ
・かつで工場があった川沿いの土地が再開発され市民の憩いの場となっている。ex ロサンゼルス川、ロードアイランド州プロビデンス(water fire)

タイトルとURLをコピーしました